岡山市民の文芸
現代詩 −第15回(昭和58年度)−


岡山港 真鍋 健二


想い出をのせて 静かに
フェリーボートが すべって行く
暑い夜の しじまを破って
白っぽい コンクリートの 波止場で
女の子が つっかけを 響かせてころんだ
自転車をきしませ 年老いた釣人は
貨物船の陰で 思いきり のけぞる


俺は独り 生暖い土にはらばって
波と星の間で
少年の日の想いにふける
トンボと魚と
あの竹の柄のついて網とが入り混って
とびかった


緑の灯台の火が、ペカペカして
突如 ミュージックが響いて来たりする


あの ハゼも カニも
あの岩影にいるだろうか!


俺はふと指を折って
年令を教えてみたりする


けたたましく船員が笑って
後は ひたひたと船底に
波が押し寄せている


俺は胸一ぱい 夜のしじまを吸って
明日に向って 歩いて行った



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