岡山市民の文芸
現代詩 −第13回(昭和56年度)−


あこがれ 吉永 ゆり子


去年失ってしまったものの重さが
今 澱のように沈み
絶え間ない雨が今日も降り続く


弱気と苦渋をカクテルで飲む 腹だたしさの出口のない思いは
分解して しゅう酸の炎となり
焼けこげて みにくくひきつれた魂
何枚も 何枚ものヴェールで包む


突然襲った嵐は
鋭い刃物となって ヴェールを切り裂き
剥ぎ取ろうとする
顔を背けたいだろうその姿は
誰よりも私


あの時なぜ気づかれぬうちにもう一枚
大急ぎで 厚めのヴェールを
まとってしまえなかったのか
だが私は
快感さえもってそれを
全部脱ぎ捨てた


雨の中でしっとりと
紫陽花は
柔らかな淡青色
薄緑の映えの中で
なんと おまえは美しい



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