岡山市民の文芸
現代詩 −第12回(昭和55年度)−


あした 吉永 ゆり子


意に染まぬいびつな鋳型に、
ぎゅうぎゅうと押えこまれた、
堅い心。
思いがけない時に
ひび割れて、
四方に飛び散ってしまうような、予測。
たが 恐らく、
もろもろと
病んで 崩れてしまうだろう。


やっと呼吸できるだけの、小さな巣箱から、
思い切って 飛びたとう。
きらきらと輝く光の中
風を切ってまっしぐらに。
ゆたかな広がりを、
肌いっぱい感じとって、
小さく縮んだ体に
新しい大気を吸いこもう。
しっとりした緑や、
滑らかな 湖を求めて。
明日こそ。


よどんだ水の中で じっと動かない、
時折、
にぶい陽の光が、
ゆらゆらと帯のように届く、水底。
緩やかな、
無の時間が過ぎて行く。
明日は。



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