岡山市民の文芸
現代詩 −第11回(昭和54年度)−


コミュニケーション 岡本 博子


喫茶店のかたすみに
いまにも崩れそうな弱さを
必死にささえている二人がいる
日焼した心が
ふっと、ドラマテイックに
駆け出したくなる天気ですネ


二枚の便せんを
手に持ったまま息をつめ
まぶたをとじている女がいる
化粧した言葉が
さあと、指からこぼれて
明日、雨ならいいですネ


騒音と喧噪の中に
消えるうしろ姿
loveを枯らしてしまった男がいる
明治的なロマンテズムで
そっと、あの人のイニシャルを書く
羽のはえそうな日ですネ


喫茶店のかたすみで
私の過去のような未来のような
想い出が通り過ぎて行くのを
だまって見ていた


こんなに、いいお天気だというのに



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