岡山市民の文芸
現代詩 −第10回(昭和53年度)−


西川河畔 宮田 裕夫


ここは西川河畔


日射の中に立つ ブロンズの 母と子の裸像
その語らいの落穂だろうか
水の面が ほっほっと輝いている


花壇に こぼれ咲く花たち
その燥ぎが はじけたのだろうか
水面に 仕掛ランプが点いては消える


ここでは すべてが光になってしまうらしい
ビルを駆け下りたつむじ風が
パッと撒き散らした銀砂になって
キラキラ光る


通過する電車のきしみが
ゆれる灰鼠の棒縞になって
いぶし銀に光る


岸辺を包む柳の帳をまくし上げるトラックの突進さえ
緑のビードロの簾の一瞬の
つや光に生まれかわる


ここでは 都会の喧噪さえも
美しい光に昇華するのだ


ここは西川河畔


一日の勤めを終えて憩う二人
その頬が 歓びに照り
見合わす瞳が夢みて輝いている



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