岡山市民の文芸
現代詩 −第10回(昭和53年度)−


少女 柴原 邦子


タンクトップの背に
水着のあとをあざやかに残して
少女がひとり
夕日の中にいる


一粒の実から
大切に育てた花を
息をひそめてながめながら
少女の瞳は輝いていた


いくつもの花にまじって
黒い小さな粒を見つけた時
少女のよろこびを聞いた


手のひらに小粒をのせて
私に気づいてふりむいた
少女の顔のはにかみに
私もまた
幼かった日の私の姿を重ねてみる


誰に聞いたか
おしろいばなの白い秘密
少女もきっと
おしろいばなの黒い実と
真白なハンカチにつつんで
姫鏡台の引き出しに
奥深くしまうだろう


少女が咲かせた おしろい花は
小さな夢と あこがれ


おしろいばなの花は好き
水鉄砲で咲かせたみたい
おしろいばなの花の色が好き
ママの指輪のルビーの色


少女はそっと
私の耳元にささやいて
夕日の中を駆けていった



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