ヒノキ(檜)
  日本固有種の樹木で、北は福島県から南は鹿児島県の屋久島まで自生する。
 「ヒノキ」の名の由来は、神事などに使う火をおこす木「火の木」が語源と言われる。
  日本書紀などの文献に登場し、古来から日本で最も重要な用材であり、飛鳥時代から奈良時代にかけての宮殿、神社仏閣に多用され、屋根の檜皮葺もこのころ始まったとみられ、数多く現存している。
  その檜皮の採取についての見解を述べてみる。
  最も外側の皮を外樹皮と呼び、細胞自体はすでに死んでいるが、樹脂等の防腐・防虫成分が含まれているため、耐久性もあり加工作業も実施し易い。
  しかし、年数を重ねるとその効果も薄れ、逆に樹皮内が病害虫にとって最良の環境となり、最適の冬眠場所となっている。
  定期的に樹皮を剥がすことによって、樹木が成長していくうえで、健全で良好な成績をあげているという結果がある。
  檜皮を剥がした後、檜に悪影響があったという事例が報告されているそうだが、それはただ単に檜皮を剥がした事実だけを捉えて、それが直接の原因としているようであるが、要因は他に存在すると思われる。
  例えば剥がした後に直射日光に晒された、凍害等の急激な温度変化があった、経験不足等で内樹皮まで剥がした、形成層傷つけたなど原因が幾多にも考えられる。
  特に内樹皮とその内側の形成層には、絶対に傷をつけないよう、細心の注意をはらって作業をしなければならない。
  細胞の生きている形成層が、細胞分裂をして木質部を肥大成長させているため傷つけることによって悪影響が出る恐れがある。
  そのためにも、原皮師の特殊技術は次世代の後継者に伝承されるべき必要がある。
  檜皮を剥がすことによって、木質部に影響が有る無いと無益な論争を行なう前に「檜皮葺」がなぜ1200年以上もの歴史を持つのか、もう一度原点にかえって考えてみる必要があるのではないか。
  問題となるような影響があるとするならば「檜皮葺」という日本古来の華麗優美な技術、日本人の心である伝統文化が現在まで継承されているはずがない。