武漢 前のページへ目次へ


黄鶴楼

 長江(揚子江)中流域に位置する湖北省の省都が武漢市です。

 市の中央には長江とその支流漢水が流れ、漢口・漢陽・武昌の3地区に分かれています。武昌地区には黄鶴楼や東湖風景区などがあり、観光の中心になっています。

 東湖を望む景勝地の一角にある湖北省博物館を訪れました。ここは戦国時代から漢代にかけての青銅器や漆器が圧巻で、特に随州の曽侯乙墓(そうこういつぼ)出土品は博物館のメインの展示品です。曽侯乙墓は戦国時代早期の曽国の王侯の墓といわれ、4つに分かれた木の墓室(木槨)の中には鮮やかな漆紋様が施された木棺が二重に入れ子にされて置かれていました。副葬品は青銅製の編鐘(へんしょう)や儀器容器・武器・木棺同様鮮やかで精細な紋様を描いた容器や想像上の動物をかたどった木製品、琴や笙(しょう)・太鼓などの楽器類などなど数々の優品が納められていました。

 曽侯乙墓現地で薄暗い建物の中に展示されていた発掘状況や出土物の写真パネルは、色あせたいかにもみすぼらしいものでしたが、そういったものでさえも写真に撮ることは許されませんでした。ところが、ここ湖北省博物館では本物がこれでもかというくらいに並べられているうえに、写真撮影ができるというのですからえらいちがいです。


湖北省博物館

 喜んで写真をバシバシと撮っていたら外国人観光客たち(国籍不明、英語をしゃべっていた)に変な顔をしてみられました。展示品も見ずに写真を撮ってばかりいる変なやつと思われたようです。親切にもカメラを構えるとすっとよけてくれました。

 売店では少々いたい思いをしました。というのは、中国では買い物は値切るものだということはよくわかっていましたが、まさか博物館の図録や冊子までもがそうだとは思ってもいませんでした。定価の印刷されている本はよいのですが、ついていないものは言い値だったのです。ガイドが聞きつけて値切ると6割くらいになりましたが、後の祭りでした。

 今回の旅の第一の目的は、曽侯乙墓出土の皮甲の見学にありました。南方遺跡で出土した、小さな木の板を組み合わせて作ったよろいの復元をする上で大変参考になるものでしたが、実見することができず実に残念でした。保存が難しい品であるだけに展示されていないことは、よくよく考えればわかることではありました。

中国歴史文化研究会 1998年5月初


前のページへ目次へ