ツタ散り敷く

ツタ散り敷く


  岡山県南の紅葉は遅く、十一月に入ってやっと本調子になる。山にマツやカシなど常緑樹が多いせいもあるのだろうが、十月ではまだ夏の色が濃く残っている。その緑がちの山路に一足早く見事に色づいたツタの葉が散らばっている。見上げると、傍らのコナラの大樹に駆け登ったツタが、折からの薄く透明な秋の陽を受けてキラキラと輝き、ほとんど風もないのに、どんどん散っている。
  このツタほど、無残な散りかたをする植物はない。葉柄は枝に残したまま、まるで無理やりちぎって捨てたような……。
  このあたりの山でひときわ見事に紅葉するのは、このツタとヤマハゼであろうか。両者とも、周囲と違和感を覚えるほどすさまじく紅葉して、はやばやと散ってゆく。そのいさぎよきこと、サクラ以上である。

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