なんと昔があったそうな。
あるところに、おじいさんとおばあさんとおったそうな。
おじいさんは山に芝刈りに行くし、おばあさんは川に洗濯に行ったそうな。
おばあさん川で洗濯しょうたら、川上から大きな桃が、どんぶりかっしりすっぱいぽー、どんぶりかっしりすっぱいぽーって流れてきたそうな。
おばあさんがそれをしゃくで引き寄せて、食うてみたら美味かったんで、「もひとつ流れぇー、おじいさんにやろ、もひとつ流れぇー、おじいさんにやろ。」いうたら、また川上から大きな桃が、どんぶりかっしりすっぱいぽー、どんぶりかっしりすっぱいぽーって流れてきたそうな。
そりょぉ、しゃくで引き寄せて、持って帰って、ひつの中に入れておいたそうな。
そうしたらおじいさんが夕方帰って来たもんじゃから、「おじいさん、おじいさん、今日な、川で洗濯しょうたら、大きな桃が流れてきたけぇ、ひつの中にしもうとる。出して食いんせぇ。」いうたら、「ほんなら、よばりょうか。」いうて、おじいさんが、ひつのふたをあきょうと(開けようと)したそうな。
ところが、かとうてあかん。
押しても引いてもあかん。
しようがないもんじゃから、おじいさんはまさかりを持ってきて、ひつを壊したそうな。
そうしたところが、ひつの中で桃が二つに割れて、中から男の子が生まれとったそうな。
「おばあさん、おばあさん、桃ん中から男の子が生まれとるで。うちにゃあ子どもがおらんから、これをうちの子にして育てようじゃあねぇかぁ。」いうて。
「あっそうかぁ、それじゃったらうちの子にしようじゃあねえか。」いうことで、桃から生まれたから桃太郎という名前にして、育てたそうな。
ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん大きゅうなってなぁ、すぐになぁ、近所の子どもとおんなじぐらい大きゅうなった。
そうしたら近所の子どもが、「桃太郎さん、桃太郎さん、山にきゅうこりぃ(木をこりに)行きましょうや。」言うて誘いに来たそうな。
そうしたら桃太郎が、「今日はな、わらんじを作らんといけんから行けんから、行っとってくれ。」
「ほんなら明日行こうで。」友だちは、山へきゅうこりぃ行ったそうな。
次の日にまた友だちが、「桃太郎さん、桃太郎さん、山にきゅうこりぃ行きましょうや。」
「んん、今日はな、わらんじのヒゲをむしらんといけんから。」
その次の日には、「桃太郎さん、行きましょうや。」
「今日は、せなあてを作らんといけんからいけん。」
その次の日には、「せなあてのヒゲをむしらんといけん。」 」
その次にゃあ、「綱をなわんといけん。綱のヒゲをむしらんといけん。 鎌ぁとがんといけん。まさかりゅう(まさかりを)とがんといけん。ノコの目立てをせんといけん。」次から次に用事ぅ作って、桃太郎はなかなか行かんそうな。
「桃太郎さん、まだどうごしらえできんか、行こうやなぁ。」言うたところが、「やれやれ、やっとどうごしらえできたから、ほんなら行こうかなぁ。」言うて、桃太郎はみんなと一緒に山に行ったそうな。
行ったら、みんなはすぐに木をこりだす。
ところが、桃太郎さんは、「いやぁ、久しぶりに来たなぁ、ちょっと一休みじゃぁ。」
日なたに腰をかけて、休んどったけど、そのうちに眠とぉなって横になって、「ゴォーー、ゴォー。」寝だしたそうな。
友だちは、木をこって、もうぼつぼつ荷ごしらえができた。
「ありゃ、もうおてんとう様、西の山へかくれるぞ。」言うて、「桃太郎さん、桃太郎さん、日が暮れるで、もう帰ろうじゃあねぇか。」
言うたところが、桃太郎は、「アーーーァ。」おぉーきな大あくびをして起きてきた。
「ありゃっ、もうおてんとうさんが西に傾いたかぁ。こりゃぁ、おまえら、荷ごしらえできたか。ほんなら、わしも荷ごしらえしょうかぁ。」言ったかと思ったら、ひと抱えもふた抱えもある大きな木の根元に行って、しょんべんを「ジャァーーッ、ジャーッ。」としたそうな。
「しょんべんひるとな、土がやわらこうなろ。」
それで、そのおぉーきな木を根元から引き抜いて、かたいで持って帰ったそうな。
「おばあさん、きゅぅ(木を)取って帰ったで。どけぇ置こうかな。」
「きゅぅ取って帰ったら、木小屋に置けぇ。」
「木小屋に置いたら、木小屋がくずれる。」
「だったら、かどはなに置けぇ。」
「かどはなに置いたら、かどはながくずれる。」
「だったら、裏の山にでも立てかけとけ。」
「裏の山に立てかけておいたら、山がくずれる。」
「そねぇもないらんから、前の川にでも捨てておけ。」言われたもんじゃから、桃太郎は、そのおぉーきな木を前の川に投げ捨てたそうな。
そうしたら、「ドサァーーァッ。」大きな音がして、じぃはじっくり、ばぁはばっくりしたんじゃって。
昔こっぷり。
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