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岡山県で口伝えに伝えられた「桃太郎」のお話は、絵本などで有名な「桃太郎」とは少しちがっているようです。

民話語り:立石憲利 篠笛:住宅正人
スピーカーのアイコン をクリックすると、民話語りの音声を聞くことができます。

音声その1を聞く(219KB)なんと昔があったそうな。
あるところに、おじいさんとおばあさんとおったそうな。
おじいさんは山に芝刈りに行くし、おばあさんは川に洗濯に行ったそうな。

おばあさん川で洗濯しょうたら、川上から大きな桃が、どんぶりかっしりすっぱいぽー、どんぶりかっしりすっぱいぽーって流れてきたそうな。
おばあさんがそれをしゃくで引き寄せて、食うてみたら美味かったんで、「もひとつ流れぇー、おじいさんにやろ、もひとつ流れぇー、おじいさんにやろ。」いうたら、また川上から大きな桃が、どんぶりかっしりすっぱいぽー、どんぶりかっしりすっぱいぽーって流れてきたそうな。
そりょぉ、しゃくで引き寄せて、持って帰って、ひつの中に入れておいたそうな。

音声その2を聞く(247KB) 桃太郎のイラストそうしたらおじいさんが夕方帰って来たもんじゃから、「おじいさん、おじいさん、今日な、川で洗濯しょうたら、大きな桃が流れてきたけぇ、ひつの中にしもうとる。出して食いんせぇ。」いうたら、「ほんなら、よばりょうか。」いうて、おじいさんが、ひつのふたをあきょうと(開けようと)したそうな。

ところが、かとうてあかん。
押しても引いてもあかん。
しようがないもんじゃから、おじいさんはまさかりを持ってきて、ひつを壊したそうな。
そうしたところが、ひつの中で桃が二つに割れて、中から男の子が生まれとったそうな。

「おばあさん、おばあさん、桃ん中から男の子が生まれとるで。うちにゃあ子どもがおらんから、これをうちの子にして育てようじゃあねぇかぁ。」いうて。
「あっそうかぁ、それじゃったらうちの子にしようじゃあねえか。」いうことで、桃から生まれたから桃太郎という名前にして、育てたそうな。

音声その3を聞く(371KB) ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん大きゅうなってなぁ、すぐになぁ、近所の子どもとおんなじぐらい大きゅうなった。
そうしたら近所の子どもが、「桃太郎さん、桃太郎さん、山にきゅうこりぃ(木をこりに)行きましょうや。」言うて誘いに来たそうな。

そうしたら桃太郎が、「今日はな、わらんじを作らんといけんから行けんから、行っとってくれ。」
「ほんなら明日行こうで。」友だちは、山へきゅうこりぃ行ったそうな。
次の日にまた友だちが、「桃太郎さん、桃太郎さん、山にきゅうこりぃ行きましょうや。」
「んん、今日はな、わらんじのヒゲをむしらんといけんから。」
その次の日には、「桃太郎さん、行きましょうや。」
「今日は、せなあてを作らんといけんからいけん。」
その次の日には、「せなあてのヒゲをむしらんといけん。」
」 その次にゃあ、「綱をなわんといけん。綱のヒゲをむしらんといけん。 鎌ぁとがんといけん。まさかりゅう(まさかりを)とがんといけん。ノコの目立てをせんといけん。」次から次に用事ぅ作って、桃太郎はなかなか行かんそうな。

「桃太郎さん、まだどうごしらえできんか、行こうやなぁ。」言うたところが、「やれやれ、やっとどうごしらえできたから、ほんなら行こうかなぁ。」言うて、桃太郎はみんなと一緒に山に行ったそうな。

音声その4を聞く(375KB)行ったら、みんなはすぐに木をこりだす。
ところが、桃太郎さんは、「いやぁ、久しぶりに来たなぁ、ちょっと一休みじゃぁ。」
日なたに腰をかけて、休んどったけど、そのうちに眠とぉなって横になって、「ゴォーー、ゴォー。」寝だしたそうな。

友だちは、木をこって、もうぼつぼつ荷ごしらえができた。
「ありゃ、もうおてんとう様、西の山へかくれるぞ。」言うて、「桃太郎さん、桃太郎さん、日が暮れるで、もう帰ろうじゃあねぇか。」
言うたところが、桃太郎は、「アーーーァ。」おぉーきな大あくびをして起きてきた。
「ありゃっ、もうおてんとうさんが西に傾いたかぁ。こりゃぁ、おまえら、荷ごしらえできたか。ほんなら、わしも荷ごしらえしょうかぁ。」言ったかと思ったら、ひと抱えもふた抱えもある大きな木の根元に行って、しょんべんを「ジャァーーッ、ジャーッ。」としたそうな。
「しょんべんひるとな、土がやわらこうなろ。」
それで、そのおぉーきな木を根元から引き抜いて、かたいで持って帰ったそうな。

音声その5を聞く(200KB) 「おばあさん、きゅぅ(木を)取って帰ったで。どけぇ置こうかな。」
「きゅぅ取って帰ったら、木小屋に置けぇ。」
「木小屋に置いたら、木小屋がくずれる。」
「だったら、かどはなに置けぇ。」
「かどはなに置いたら、かどはながくずれる。」
「だったら、裏の山にでも立てかけとけ。」
「裏の山に立てかけておいたら、山がくずれる。」
「そねぇもないらんから、前の川にでも捨てておけ。」言われたもんじゃから、桃太郎は、そのおぉーきな木を前の川に投げ捨てたそうな。
そうしたら、「ドサァーーァッ。」大きな音がして、じぃはじっくり、ばぁはばっくりしたんじゃって。
昔こっぷり。

平成14年10月10日、3丁目劇場で行われた公演「岡山の民話と民謡を楽しむ夕べ 桃太郎と米のなる木」にて録音しました。
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The Lit City Museum 岡山シティミュージアム
立石憲利・住宅正人
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