1.菅原道真の犬伝説が残る島

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清少納言の枕草子と犬島

 清少納言の「枕草子」の中にあるお話です。
 平安時代、時の天皇は一条天皇と申されました。そのお妃に定子(ていし)様とおっしゃる美しい皇后様がおられました。
 お二人はとても仲むつまじくそしてお二人ともとても動物好きでいらっしゃいました。天皇は可愛い猫を飼っておられ「命婦(みょうぶ)のおとど」と名付け、おもり役も「馬の命婦」を付けて大切にしておられました。命婦のおとどというのは身分の高い婦人の敬称なのです。
 定子皇后は勇ましく強い「翁丸」という犬を飼っていて「右近の内侍(うこんのないし)」が大切にお世話をしておりました。
 ある日、一条天皇の御猫の「命婦のおとど」が縁先で居眠りをしていたのをおもり役の「馬の命婦」がお行儀が悪いと思い何回も声をかけたのですが、いうことを聞かないのです。そこへ定子様の飼われている犬の翁丸が姿をみせたものですから、もり役はちょっと脅そうと思って、「翁丸、命婦のおとどをかめ!」と声をかけました。
 正直者の翁丸は本当かと思い「命婦のおとど」に飛びかかりました。びっくりしたのは猫です。宮中を駆け回り天皇の御簾(みす)の中に逃げ込みました。
 ちょうど天皇はおいでになり「命婦のおとど」をふところにお入れになり、「この翁丸を捕らえて打て。犬島へ流し使わせ。ただいますぐに。」とたいそうお怒りになりました。近習たちはよってたかって打ち、犬島へ流されました。
 それからしばらくして、あまりにけたたましい犬の鳴き声がします。
 定子様のところへ女官が飛んできて「翁丸がもどってきたのを見つけられ、打たれて死んでしまったということです。」と申し上げました。
 ふびんなことをしたと定子様は思われました。しかし、死んだと思っていた翁丸は息を吹き返し定子様と会われます。そしておとがめも許されて再び宮中で飼われる事となりました。
 このことから犬島は、当時皇室と縁があったと思われます。

 

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