旧足守藩侍屋敷遺構 目次へ次のページへ

岡山県指定重要文化財 昭和31年4月1日指定

 この屋敷は、江戸時代に備中国(現在の岡山県西半)の南東部で、2万5千石を領有した足守藩の国家老を務めた杉原家の居宅でした。家老屋敷のたたずまいをほぼ完全に近い形で伝えていて、この種の武家屋敷としては県下唯一の貴重なものです。
 足守陣屋町の下惣門から藩主の屋形に至る主要な道筋である本町通りに面しています。表門(長屋門)内側に、桁行(正面左右の長さ)の長い母屋が町割の方位に沿って建ち、母屋の裏手には内蔵と湯殿が離れて設けてあり、内蔵へは廊下がつながり、また母屋の左手(東)脇に米倉の土蔵を一棟設けています。
 母屋は桁行12間半(24.5m)、梁間5間(8.99m)の規模であり、屋根が茅葺の寄棟造で総廂の付く平屋建です。正面に唐破風の屋根を構えた玄関を設け、家老屋敷としての威厳を備えています。玄関の式台を上がると、上床つきの8畳の式台の間があり、入って右手側が奥に大床の付いた二の間の13畳の広間となっており、二の間の右(上)手に床と付書院を設けた8畳の座敷(一の間)に続きます。一の間の床脇の外はすぐ縁側で、付書院には花頭窓を開いています。一の間と二の間は、境の鴨居の上には珍しい好図組欄間を入れ、天井が高くすべて竿縁天井であり、外側に縁をめぐらせていて、質素なうちに格式のある武家造りの建構えになっています。式台の間・二の間・一の間の3間が表向き(公式用)の書院です。式台の間の奥には、武家屋敷には必ず設けてある2畳の仏間があり、自刃の場となるこの部屋は柱が逆目となっています。勝手方(私生活用)の奥向きには、式台の間の入って左手に6畳の玄関の間を設け、奥に4畳の合いの間、この奥に炉のある6畳の茶の間があり、その左手が板敷きの台所と土間となっています。二の間の奥は、左手に3畳の脇部屋を伴う7.5畳で高床の当主の居間となっています。
 一の間の前面には池泉を主にした遠州流の小庭園があり、その外側の土塀には、藩主来訪時に使用する御成門を設けています。
 長屋門の右手は茶室、左手は中間(使用人)部屋となっています。

遠州流の庭と背後の御成門

 

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