岡山の草花歳時記
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 「球根植物の栽培と管理」
 柴田 映昭
The culture of the bulbous and tuberous plant and its management
Hideaki Shibata
第1章 球根植物
 球根植物の生活史は、花が咲き種ができる顕花植物であるが、一・二年性の植物と違い、開花結実して地上部が枯れても、地下部は枯死せずに植物体が生き残り、長年にわたって生育と開花を繰り返す多年性の植物で、長い乾燥期のある地域に植生し、形態的に葉・茎・根が肥大して養分の貯蔵器官となっている。
第2章 球根植物の分類
 1 生育習性による分類
  1. 春植え球根
春に生育をはじめ夏から秋に開花し、晩秋の降霜や低温で地上部が枯れ地下部に球根を形成して休眠し、冬季の低温乾燥期を過ごすもの。
球根が地温の低下で枯死するものが多く、通常は堀り上げて室内等で貯蔵する。
アマリリス、オキザリス、グラジオラス、ダリア、カンナなど。
  2. 夏植え球根
秋に突然花茎が伸びて花が咲き、花後に葉が伸びてきて冬中生育を続け、春に地上部が枯れて休眠する。
寒さに強いので一度植えたら数年間放植してよい種類が多い。
コルチカム、ネリネ、リコリスなど。
  3. 秋植え球根
秋に生育をはじめ冬の低温期を経て春に開花し、気温の上昇に伴い地上部が枯れ夏の高温乾燥期に休眠するもの。
夏の高温期に十分休眠させることや冬の低温にしっかり遇わすことができないと、生育が悪かったり花が咲かないことがある。
アイリス、アネモネ、クロッカス、スイセン、チューリップ、ユリなど。
 2 形状による分類
  1. 鱗茎(bulb)
茎が短縮し葉が多肉化して重なり、茎頂を包んで球状になったもの。
(1) 鱗葉が同心円状の層になり外葉が乾燥皮膜となって包む層状又は有皮鱗茎
チューリップ、スイセンなど。
(2) 鱗葉がうろこ状になり瓦状に重なる皮膜のない非層状又は鱗状鱗茎
ユリ。
  2. 球茎(corm)
茎が短縮し肥大化して球状となり、葉鞘が乾燥し皮膜となって各節について球を包んでいるもの。
グラジオラス、クロッカスなど。
  3. 塊茎(tuber)
茎が塊状に肥大化し、皮膜がないもの。
アネモネ、シクラメンなど。
  4. 根茎(地下茎)(rhizome)
地下部の節から分枝した茎が肥大化したもので、節には側芽がある。
カンナ、ジャーマンアイリスなど。
  5. 塊根(tuberous root)
根が肥大化したもの。
ダリア、ラナンキュラスなど。
第3章 球根植物の栽培
 1 植栽の要点
  1. 選別
(1)種類・品種名の正確なもの
(2)重いもの
(3)病害虫に侵されていないもの
(4)芽や発根部が傷んでいないもの
(5)傷や変形・変色・変質のないもの
  2. 消毒
 ベンレート(殺菌剤)とマラソン(殺虫剤)の混合液(各 1,000倍)に約30分間侵漬後、陰干しをして植栽する。
  3. 場所
 日照を好む種類と半日陰を好む種類があるので、説明書などの資料で確認し、それぞれ適した場所に植栽、又は配置し良好な環境において育てる。
  4. 用土
(1)地植え
堆肥、腐葉土、ピートモスなどの土壌改良材と苦土石灰をよく混ぜ込む。
(2)容器植え
赤玉土小粒70%と腐葉土又はピートモス30%に、緩効性肥料及び苦土石灰を各々一握りをよく混ぜ込んだ培養土か、市販の「球根の土」などを使う。
  5. 植栽
(1)地植え
深さは球根の高さの2倍の土がかかる程度、間隔は球根3球分が入る程度で植栽するが、例えばユリは深く、リコリスは浅く、ジャーマンアイリスは殆ど土の上に置くだけとか、様々な植え方があるので個々の栽培方法を参考にする。
(2)容器植え
深さは球根の先端が覗くか覗かない程度から球根1球分の土がかかる程度で、間隔は狭く密植気味に植栽する。
  6. 元肥
 球根自体が養分を持っているので肥料分は多くは必要ないが、緩行性肥料を直接球根に触れないように施す。
第4章 球根植物の管理
 1 栽培管理の要点
  1. 灌水
(1)地植え
通常は灌水しないが、夏や冬に晴天が続き土が極端に乾燥した時は与える。
(2)容器植え
植栽後2〜3日経ってから灌水し、以後は土の表面が白く乾いたら与える。
  2. 追肥
 リンサン・カリを主体とした液体肥料を、各々の時期に灌水のかわりに施す。
(1)春植え球根
植栽して1〜1.5ヵ月後から2ヵ月に1回程度与える。
(2)夏植え球根
花後に1回と冬期に2回与える。
(3)秋植え球根
2月、3月と花後に1回ずつ与える。
  3. 防除
(1)害虫
アブラムシにはオルトランを散布するなど、発生初期に駆除すると薬剤も少なくて効果も早く現れる。
(2)病気
うどんこ病が発生したら、早急にベンレートを散布し抑制する。
  4. 管理
花が咲き終わったら、速やかに花がらを除去する。
 2 休眠期の管理
  1. 球根をそのまま植えて置いてもよいもの
植え置き栽培が可能なものは、カタクリ、スイセン、カラー、オキザリス、ヒガンバナ、ナツズイセン、ヒアシンンス、シラー、ダリア、ユリ、カンナなど。
  2. 球根を堀り上げて貯蔵するもの
(1)乾燥状態で貯蔵するもの
葉の緑が三分の一程度残っているうちに堀り上げ、完全に枯らしてから茎葉を取り除き、ネットなどに入れて通風のよい場所に貯蔵する。
■春植え球根
グラジオラスなど。
■夏植え球根
リコリス、オキザリス、コルチカム、サフランなど殆ど全て。
■秋植え球根
ラナンキュラス、ヒアシンス、クロッカス、ムスカリ、スイセン、アネモネ、チューリップなど多数ある。
(2)湿潤状態で貯蔵するもの
土を乾かし取り除いて消毒し陰干ししてから、乾いたオガクズとかバーミキュライトなどに埋めて貯蔵するが、春植え球根のように寒がるものは室内で貯蔵する。
■春植え球根
ダリア、カンナ、アマリリス、カラー、カラジューム、ポリアンサスなど。
■秋植え球根
フリチラリア、ユリなど。


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