石の嫁ぎ先

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仙台東照宮の鳥居

 仙台東照宮の石鳥居が犬島産だとわかり、仙台空港から市の中心部に向かいました。杜の都と唱われている緑の多い素晴らしい街です。
 東照宮は、JR仙山線で仙台駅の次の東照宮駅で下車し、線路脇の小道を歩いて数分の所にあります。小高い丘に向かって伸びる参道の入口に明神鳥居が美しい姿で建っています。「よくぞ350年の間立ち続けていたなあ、ご苦労様。」と声をかけました。
 右柱には「得巨石於備前国運千南縛貘達当所彫刻以創立之」と彫られ左柱には承応3年(1654)の建立となっています。
 本殿にお参りするため石段を登って行くと、石段の両脇には家臣達が寄進した石灯籠がずらりと並んでいて厳かな気分になってきました。さすが本殿は材料を吟味して建立し、伊達家の守護神として崇敬されているもので大変立派なものです。
 社務所に高崎宮司さんをお訪ねし、鳥居石の産地の岡山市犬島から参拝したことを告げました。
 宮司さんは、「東照宮を建立した伊達家2代目忠宗の奥方様が、池田家の振姫君なので故郷の備前の国から鳥居石を運びました。一度江戸で下ろし、そこで祝い事をしてから再び海路を仙台まで運びました。」と話してくださいました。お祝いの席は華やかだったろうなと顔も知らない振姫の容姿や着物を想像し私まであでやかな気分となりました。
 鳥居は、昭和53年の宮城県沖地震で倒壊し、反り返った左部分の笠石を仙台の近くの石で補修しているために、石柱などと異なり少し黒っぽく変色しています。やはり犬島石は水分を吸いにくく風化が進まないことを実証しています。
また、本殿脇の大きな手水石と高さ2mくらいある一対の石灯籠も鳥居と一緒に犬島から運ばれたものであることも教えて頂きました。
 古文書には「備前の国大島」とありますが、これは犬島が正しいのですねとのお尋ねがありましたので、犬島は質の良い花崗岩で出来ており、鎌倉の鶴岡八幡宮、上野の東照宮、静岡の浅間神社などの鳥居として各地で使われていることをお話しました。
 帰りの参道脇に「おくの細道」の標柱が立っているのが目に止まりました。曽良の日記によると元禄2年(1689)松尾芭蕉は東照宮を参拝したと記されています。南の備前の国から嫁いできて冬の寒さに耐えている鳥居を見上げながら、心の中にどのような十七文字を刻んだのかなと思いながら東照宮を後にしました。

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