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戦争・戦災体験記:空襲にあいやっとたどり着いた我が家

空襲にあいやっとたどり着いた我が家  秋山 美津枝  76歳

 岡山空襲から60年思い出したくない、永久に記憶から消してしまいたいのに忘れることのできないことです。
 当時私は、西中山下の会社の寮から岡南の軍需工場に木炭バスで通っていました。29日の未明大きな轟音に飛び起きると、窓の外は真っ赤な炎があがっていました。毎夜寝る前には、非常袋を確認して、いつでも持ち出せるようにしていたのに、着のみ着のまま飛び出し、外に出ると下駄を履いていたので靴をと思い、後ろを振り向くとはや玄関は火柱が上がっていました。そのあとは阿鼻叫喚の中を、右往左往しながら出雲大社の方に人の波にもまれ逃げていると、リヤカーに子どもや老人を乗せた人、親子で一枚の布団を被っている人、途中天瀬の辺りで不気味なゴウゴウという音とともに油脂焼夷弾が雨あられのように降ってきて、街路樹にも道もそして私の頭にも炎がつき、あたりは一面火の海となり、咄嗟に目に入った防火槽に頭をつっこみ、母が縫ってくれた防空頭巾で命を拾いました。
 逃げた先は京橋の下で、大勢の人で埋まり、周辺は物凄い勢いで家が燃えあがり、いつの間にか降り出した大雨が風を呼び、炎は火柱となって雨戸とか戸板のような物を渦の中に高く巻き上げて、バチャンバチャンと川面に叩きつける音と光景は、この世で起きていることとは思えず、唯一人で逃げている私を震えあがらせました。
 時がどれ程過ぎたのか、遠くの方からボーボーとサイレンが鳴ってきたので、やっと夜が明けたのかと思うとお昼でしたが、周囲は黒いような雨と燃え盛る炎と煙で夜のようでした。
 しばらくして川岸の方を見ると、小船が十艘ばかり浮かんでいて、その中に「神州8602」工場会社は無事だこの舟に乗れと小旗が立ててあり、何処に逃げるあてもない私にはまさに地獄に仏の救いでした。その船も夕方近くなって川を下りましたが、会社は死傷者の救護所になっていて入れないからと、まったく知らない所に着きました。そこで頂いたおにぎり一個の有難さ、味は今でも忘れません。
 罹災証明をもらって家に帰るように言われて岡南から、とぼとぼと人絹道路を北に向かって発行されているというところを探して探して、さまよい歩き街に入ると、焼け野原となり瓦礫の山で廃墟となった倉が立っているのが目に入り、清輝橋・大雲寺のあたりには焼けて炭のようになった黒とも茶とも分からない丸太棒のような死骸が道の辺りに幾体も転がしてあり、それを見ながら歩いているのに私には、怖いとか気持ちが悪い、可愛そうなという人間の感情はなく、ただ夢遊病者のように一枚の証明を求めてやっと3日目に弘西小学校でもらいました。
 その間には父親が娘を探しに、柵原町から28インチの古い自転車で、菊ケ峠を越え会社まで来て、生死は分からないといわれ引き返す途中、大雲寺あたりでもしや娘ではないかと一人一人確認したと口数の少ない父が話し、以後は口をつぐんでいたと後で聞きました。ちなみに自転車は車輪だけになっていたとか。私は一枚の証明を握りしめて駅に着くと岡山駅も無惨でしたが、南を見ると天満屋と医大が遠くに見えました。上りの山陽線はすじなりの人がさばり付き、やっと和気駅で降りて片上線に乗りかえると、十人ばかりの人が奇異な者を見るような顔をしていたのを今でも覚えています。私にはすべてが白昼夢のようでした。
 7月1日この日も暑い日でした。家に帰り着くと母が背を向けて神棚にお灯明をあげて拝んでいました。声を出す力もない私の気配を感じて振り向いた母の顔を一瞬見て気を失い、そのまま何も分からなく寝込んでしまいました。先日5歳下の妹に、どんな姿で帰ったのかと60年目にして聞きますと、それこそ下着一枚で亡霊のようだったので、このありさまだけは知らせまいと約束したと話しました。禁句にしたことが、せめてもの親の思いやりだったのでしょう。両親が生きていれば110歳前後。孝行一つせず、お礼の一つも言わないで苦労をかけたことを悔やまれてなりません。
 どうぞ悲惨な戦争は二度とないように、永遠の平和を祈ります。

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