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制作協力 倉敷芸術科学大学


■第27回 坪田譲治文学賞 [平成23年度]
第27回坪田譲治文学賞

鉄のしぶきがはねる・まはら三桃(講談社)

<詳細情報>
鉄のしぶきがはねる・まはら三桃(講談社)

 選考経過
 平成22年9月1日から平成23年8月31日までの一年間(※)に全国で刊行された小説、児童文学等の中から、文学・出版関係者等から推薦された100作品を予備選考会で検討し、「大人も子どもも共有できる世界を描いたすぐれた作品」という観点で、候補作5作品を選定。
 これを、平成24年1月16日(月)開催の第27回坪田譲治文学賞選考委員会(会場:東京都千代田区平河町「ルポール麹町」)で一作ずつ慎重に検討した結果、まはら三桃著『鉄のしぶきがはねる』が選ばれた。
 選考委員は、五木寛之、川村湊、高井有一、西本鶏介、森詠(50音順・敬称略)の5名が出席(竹西寛子委員は欠席)。

※岡山市文学賞条例施行規則第2条に、選考の基準日は9月1日と定められている。


 受賞者略歴

まはら三桃さん  まはら 三桃(みと)

 1966年、福岡県生まれ。2005年、「オールドモーブな夜だから」で第46回講談社児童文学新人賞佳作を受賞、『カラフルな闇』と改題し刊行。そのほかの著書に、『最強の天使』『たまごを持つように』『鉄のしぶきがはねる』『鷹のように帆をあげて』(以上、講談社)がある。デビュー以来、中学生や高校生の不器用な主人公が、自分だけの大切な何かにひたむきに打ちこむ姿を、やさしい目線でていねいに描き出してきた。童話『おとうさんの手』(絵・長谷川義史 講談社)は、2011年読書感想画中央コンクールの課題図書に選ばれている。鹿児島県在住。鹿児島児童文学者の会「あしべ」同人。


 受賞者コメント
 “大人も子どもも共有できる世界を描いた優れた作品”に贈られるという坪田譲治文学賞は、私にとって大きなあこがれでした。というのも、創作を始めたころ、私には小さな子どもが二人いて、眠る前に絵本や物語を読むのが日々の楽しみだったからです。すでに知っているお話でも改めて読むと、新しい気づきがあったり、初めて読む物語には、子どもと同じように引き込まれたりと、読みきかせは子ども向けの本の深さや、守備範囲の広さに気づく経験でもありました。
 読書は非常に個人的な行為ですが、同じ本を読んだ人と思いを共有することができます。それも年齢を超えて分かち合えたら、より深く豊かな体験になるでしょう。そういうものをぜひ書きたい。それが私の創作の原点です。
 坪田賞をいただけたことで、進むべき道を再確認した気がしています。身に余るような賞にふさわしい作家になれるよう、努力してまいります。ありがとうございました。


 作品の概要
 工業高校機械科1年の唯一の女子、三郷心(みさと しん)は、通学時以外はいつも作業服姿の長身で、男子のなかにいてもあまり違和感がない。数値がきっちり出るものが好きな心は、工場や金属への愛着を持ちながらも、手作業よりもコンピューターを信頼していた。しかし、確かな技術を持つ先輩・原口、工作物を一瞬見ただけでその数値がわかる職人・小松、旋盤工場を営んでいた実家の祖母など、個性豊かな人物たちに影響をあたえられ、ものづくりの頂点をめざす「高校生ものづくりコンテスト」の旋盤部門に挑戦することになる。無口で無愛想な主人公が、不器用ながら、職人技の魅力に目覚め、自分の手を懸命に動かし、ものをつくる喜びに気づいていく姿は、すがすがしい。九州弁のリズムにのって、「旋盤」という未知の世界をのぞくことができる、機械油と鉄が焦げる匂いにみちた、旋盤青春物語。


 選考委員のコメント
 森 詠 氏 (作家・岡山市文学賞運営委員)
 今年度の坪田譲治文学賞は、最終候補作の五作品を慎重に審査した結果、全会一致で、まはら三桃(みと)さんの『鉄のしぶきがはねる』に決まりました。
 『鉄のしぶきがはねる』は、北九州工業高校機械科一年で、唯一の女子である三郷心(みさと しん)が、男子ばかりの中、男子そこのけに旋盤を操作し、鉄の塊に挑んで「ものづくり」職人をめざす学園青春小説である。三郷心が男子の仲間たちと、ものづくりに挑戦し、「高校生ものづくりコンテスト」をめざす恋あり挫折ありの物語は爽快だ。日本のものづくりの技術や技能が、こうした九州の工業学校の若者たちにも根付き受け継がれていることを教えられた。ぜひ若者たちに読ませたい傑作である。
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